「心臓がちょっと早く動くだけ」制作秘話

本文を読む前にこちらの作品をご一読ください。





  • もとは短編集のタイトルだった

このタイトルは元々大学の講義で小説を書いてみようのコーナーがあり、その題名が「心臓がちょっと早く動くだけ」だったんです。「心臓」をテーマに4本の短編集を書いてみようからスタートした作品でした。実際は5分程度で読み終わる読み切りサイズでしたが、そこから派生させてさせて声劇台本として落とし込みました。

「心臓」をテーマに、と言われていくつかキーワードを出しましたが、「心臓の病気」というキーワードは割と早い段階で出てきていました。そして、ただの心臓病より実在しないフィクションの病を作ってみようと思いました。そういう時に便利なのが『奇病』という既に確立されていたカテゴリーでした。

慧くんのモノローグで「花を吐くように、目から星が流れるように、背中から翼が映えるように」という言い回しはモロ有名どころの奇病を取り上げています。

 

  • 元作品には相澤慧のみ出演萌と先生は声劇台本になってから新しく登場した

慧くんも元々は相澤慧という名前ではありませんでしたし、舞台は病院ではなく学校でした。奇病で朝から学校に行けず、普通の高校生としての生活を送れていないけど、それでも同級生とご飯を食べたり冗談を言ったりできるよ。奇病ってだけで人と違うと思わないで的なメッセージ性を込めて書いていました。

声劇台本になっても根本は変えないでおこうと決め、同じ奇病の人間が出てくるとより良いなと思い真白萌という人間が誕生しています。その際、より奇病というのが分かりやすいキャラクター像にしようと思い、外見にとても反映されやすい病気をと、萌ちゃんの病名を決めたという流れ

 

  • 萌ちゃんを決めた時に最後の台詞も決まった

真白萌という人間ができた時、最後の台詞もこれにしようと決めました。慧くんは心臓が2個あるので心拍数が平均の2倍以上あります。これがまず1つ目の心臓が早く動く理由。そしてラストの萌ちゃんがドキドキから心拍数が上がっているところ。これが2つ目の心臓が早く動く理由。始まりと終わりにそれぞれタイトル回収ができるようになっています。今見ても綺麗な流れだと感心しちゃいます。

 

  • アメミット病と変異型ダーウィン症候群の隠れ設定

本編では直接書かれていないけれど、アメミット病と変異型ダーウィン症候群の設定について少しだけ語ります

まずアメミット病は先天的な病気であり、始めから心臓を2つ持って生まれてきます。心臓が2つある理由はそれぞれの心臓が血液を送り出すポンプとしての役割が弱く、2つの心臓を稼働させないと全身に血液が行き渡らないから。そのため作中にあるように心臓がどちらか止まったらその時点で死んでしまいます。何となく生まれる過程で起きる遺伝子の問題が原因と考えています。

新生児から幼児期までは心拍数の平均が100回/分を超えています。そのため幼い頃は200回を超える心拍数のあるアメミット病の患者は心臓にとても負荷がかかりやすく、心拍数が多い幼少期は病院で過ごすことが多かった。という設定につながってくるのです。慧くんが先生と沢山いたのもこの時期と思ってもらって大丈夫です。その後成長するにつれて落ち着いていき、高校生の今では通院程度で大丈夫になっている病気です。

心拍数が多いこと以外は本当に普通の人と変わりませんが、一生付き合っていく病気として描いています

対して萌ちゃんの病名は『症候群』。原因不明であるが共通の病状を示す患者が多い場合に付けられます。

変異型ダーウィン症候群は本編にもあるように身体の一部機能が異常発達を起こす病気です。萌ちゃんの場合はそれが眼でした。異常発達を起こした瞳は遠くのものを見れるだけでなく、その細かな表情の機微にも敏感です。化け物だと言われたおばさんの悪意だけでなく、病院内の他患者さらには看護師の視線、表情も決して良いものばかりではなかったでしょう。小学校を卒業したばかりの萌ちゃんは、同級生から送られる隠されない異質なものを見る目に耐えられませんでした。そして唯一無条件で愛してくれると思っていた両親からは見向きもされません。この状況では自分に自信が持てなくなり、主治医の先生からの視線、表情、言葉も信じていいか分からなくなりました。

自分が皆が共通として持っていると思っている「普通」ではないものを持っていることから、世界から置いていかれているという漠然とした恐怖が萌ちゃんを包み込んでいます。

そんな中、慧くんと出会い、自分も他の人と何も変わらないことを少しずつですが受け入れれるようになりました。この背景には、萌ちゃんにずっと変わらずの態度で居続けていた先生が実は影の立役者としていたのでは無いでしょうか。

萌ちゃんの病気は最終的に治ります。これは花吐き病などの奇病にある、「治るもの」としての意味を付けたかったからです。治った理由が漠然としているのも、原因不明の症候群らしい終わり方と言ってもいいでしょう

 

  • 先生が血が苦手だという設定あれは単なる好みです

けれど悟られたくないという先生の思いと、頭ごなしに怒りつけない、否定しない小児科医の言葉選びを混ぜ込んだのが萌ちゃんと先生の会話部分なのです

 

 

 

いかがでしたでしょうか?少しでもこの作品のことがしれていたら嬉しいです。

それでは今回はこのあたりにて。この制作秘話が楽しめたという方、これを踏まえてもう一度読む!上演する!という方。本当にありがとうございます。よろしければ別台本もお読みいただけると嬉しいです。

 

 

また、マシュマロ開設しております。感想やリクエスト。〇〇の制作秘話が聞きたい!〇〇の続編やアナザーストーリーは無いの!?などのご要望。是非ここに吐き出してください。ちなみに誤字指摘、凄く嬉しいです。自分絶対どっか間違えてるんで…確認したと思っても間違えてるんで………


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